こんにちは、ムジョーです。
このページは、骨格筋電気刺激やEMS(Electrical Mucsle Stimulation)と呼ばれる技術の仕組み・効果・使い方を解説ページです。
美容健康機器に興味がある方や、EMS機器を作ってみたい方は、ぜひご一読ください。
私自身、仕事で必要に応じて勉強しました。体系的にまとめられているものがなく、苦労したので企画開発の担当者や興味がある方の役に立てばと思い、記事にまとめてみました。
元 EMSを用いたトレーニング・美容機器の商品企画・開発者。
現在は、関連分野の技術の解説者としてブログ運営中。
EMSは視覚的にはなかなか様子がわからない技術なので、
目的も曖昧な変な商品も多いです。
少しでも正しい知識をつけてもらって、満足のいく体験をサポートしたいと思います。
参考図書(PR)
EMS(骨格筋電気刺激)とは何か?
EMS は Electrical Muscle Stimulationの略。 (日本語は電気的筋肉刺激・骨格筋電気刺激という)
微弱な電気刺激を流すことで、自分の意思とは関係なく筋肉を動かす技術。(不随意運動ともいう)
元は身体麻痺の治療・リハビリといった医療分野や低周波治療器でもお馴染みの技術です。
近年は、トレーニングなど医療以外の目的にも使用されています。
EMSの特徴は、負荷をかけなければ鍛えられない速筋(瞬発力のある太い筋繊維)を優先的に刺激するボディメイク向きの技術である点です。
2000年頃、『アブトロニック』などの腹筋ベルト型の商品が楽して痩せられるなどの触れ込みでテレビの通販番組を中心に人気を博しました。
2015年に発売された『SIXPAD』(株式会社MTG)を皮切りに、再びEMS機器の人気に火が付いています。SIXPADの特徴は、電気刺激の周波数を20Hzにしたトレーニングプログラムが組まれていること。
監修されている京都大学名誉教授の森谷敏夫氏の研究成果で、最も効率的に筋肉を鍛えられる周波数が20Hzとなっているとのこと。
実際、他社のEMS商品との体感の違いも感じられるのでSIXPADの強みの一つなのでしょう。
EMSと低周波治療器との違いは?
医療機器との基本的な原理の違いはありません。国毎の法律や分類法で名称が様々に変わるのが実情の様です。
日本においては、低周波治療器は医療機器であり、EMSは雑品とされています。
医療機器は厳しい審査があり、機器から得られる効果効能も明確に定められています。
一般的に広く売られているEMS機器は「雑品」として、とくに審査をされることなく販売されており、「運動・トレーニング」を目的・効果として広告表現する分には、日本で問題なく販売できます。
(安全性等については、自主基準)この点が大きな違いとして挙げられると思います。
低周波治療器では「肩こりの解消」「マッサージ効果」「疲労回復」「血行促進」になります。
EMS(骨格筋電気刺激)で期待できる効果
上述の通り、EMSで得られる効果は「筋肉のトレーニング」です。
ダンベル等の運動器具と同様、電気の力で筋肉を鍛える事・運動効果が得られます。
筋肉のトレーニングで得られる効果
- 脂肪燃焼促進
- 基礎代謝増加
- ボディラインの引き締め
- 運動不足の解消
結論から言うと、EMSは「筋肉を鍛える」ためのものであり、脂肪はなくなりません。
筋肉動かし、肥大化させ、代謝を向上させ、エネルギー消費を高めます。
そして、EMSでは通常の筋トレと異なり、負荷をかけなければ鍛えられない速筋(瞬発力のある太い筋繊維)を優先的に刺激することができます。速筋は筋繊維が太くいため見た目の変化につながりやすく、ボディメイク向きの技術である点です。
ダイエットでEMSを活用するには?
EMSを使った効果的なダイエット方法:筋肉を増やして脂肪を燃焼させよう
ダイエットは運動だけすればよいのか?という議論もよくありますが、運動での消費カロリーなどたかが知れています。(ジョギング30分で200~300kcal程度)
脂肪を減らすのであれば、摂取カロリー以上に消費カロリーを増やす必要があります。
食事を減らして摂取カロリーを減らす & トレーニングを通じて消費カロリーを増やす必要があります。
消費カロリーを増やすために筋肉を鍛える。その目的のために、EMSという技術は有用です。
普段トレーニング習慣がない人には、筋肉を増やために手軽に始められるのでお勧めです。
運動不足の解消として手始めに使ってみるものおすすめです。
EMSトレーニングで筋力・筋肉量があがると、基礎代謝が増加するので、消費エネルギーも増やすことができます。これにより、基礎代謝が増加すれば長期的に脂肪燃焼効果が期待できます。
EMSも「トレーニング」であり、軽めの刺激は効果がありません。
ただ電気を流せばよいというものではなく、筋肉に負荷をかける必要があるため、可能な限り強く刺激する必要があります。しっかり、筋肉が動くことを感じて、筋肉の縮む力を強く感じる負荷(高いEMSの電気レベル)をかけてください。
しかし、大きな電流を流す際にはピリピリとした感覚が生じることがあります。
EMSのピリピリに注意
ここで、注意点としてはピリピリ皮膚が痛いのとは違うという事。
電気が筋肉でなく皮膚に影響しているので、電気抵抗を減らすため水分量を増やしてください。(例:使用予定箇所を軽く水で濡らす)
その他の効果
運動することで、心理的にも好影響を与えることはよく知られています。
EMSでも同様の効果が得られることが研究で分かってきています。
局所の骨格筋への電気刺激が気分・感情に与える影響:随意運動との比較(J-stage)
筆者自身、疲労感で何もしたくない時でも、EMSでのトレーニングを行うことで終わるころには気力が回復して動き出せます。
一度筋肉を動かし、運動すれば身体が動き出してくれる。心の慣性力とも呼ぶべき効果がEMSからも得ることができます。
おまけ:肩のトレーニングは肩こり解消に良い
EMSは、低周波治療器とは違い、肩こり解消を目的には売られていません。(薬機法の都合)
ですが、肩用のEMSは僧帽筋をはじめとした肩周りの筋肉をしっかり刺激できます。
怠けて固まってしまっている筋肉をしっかり刺激して動かしてあげることは、肩こり解消にものは、良いとされており、継続的に運動すれば改善が見込めるでしょう。
参考:PMDAでの低周波治療器の定義
<注意>
筋肉が動く原理としては、医療分野で使われる低周波治療器と呼ばれるものと変わりません。
しかしながら、量販店などで販売されているEMSはいわゆる「雑品」という分類になり、広告表現できるのはトレーニングだけ。※法律の都合です。
低周波治療器については、
[定義]
経皮的に鎮痛や筋萎縮改善に用いる神経及び筋刺激装置をいう。外部刺激装置及び電極から構成される。電極は皮膚に置き、身体に挿入しないため、電気刺激が皮膚を経て(経皮的に)痛みのある部位又は筋障害部位に供給される。通常、いくつかの予め設定された調節オプション(パルス周波数、パルスの持続時間等)を備える。ポータブル、電池電源式のものもある。経皮的電気神経刺激装置(TENS)及び電気的筋刺激装置(EMS)を含む。手術、外傷、筋骨格障害、滑液包炎、歯科的障害に関連した疼痛の治療に用いる。物理療法及び陣痛・分娩時にも用いる。温熱機能付きのものもある。
[使用目的又は効果]
経皮的に鎮痛及び筋萎縮改善に用いられる神経及び筋刺激を行うこと。と定められています。
引用元:PMDA(2022/6/3時点での確認)
もし、医療機器認証をとっていないで「鎮痛」「血行促進」「むくみ解消」なんてことが書いてあるものあったら違法なのでご注意ください。
EMSは効かない?は誤解
ネットや口コミを見ると、効かないなんて言われる方が良くいらっしゃいます。
それも、ダイエットがうまくいかない方だけでなく、しっかりと筋トレをされている人まで様々。
EMSが効かないということをSNSで発信する方をよく見かけます。
こういった方には、ぜひ一度見直し手頂きたい点があります。
①電気が弱くて効いてる感じがしない
これは、いくつか可能性があります。
- 肌水分量が少なくて電気が弱まっている。
- 装着部位が悪い(運動神経から遠い)
- 脂肪が厚くて電気が通らない
脂肪が厚いと感じる方は、位置を変えてみてください。(例:腹筋であれば股関節に近く)
脂肪の薄いところを探してみてください。
②ぴくぴく動くだけで筋肉が育たない
これは、申し訳ありませんが使っている商品が悪いかもしれません。
トレーニング効果を出すためには、持続的に筋張力を発揮し、収縮をしっかりさせなければなりません。
しっかりと収縮させるためには、強縮・不完全強縮という状態になる周波数が必要になります。
体感は、「ぴくぴく」とは違い、「ギュー」っと長く縮む感覚となります。
この状態になるのは大体20Hz前後の周波数より高い必要になります。SIXPADで20Hzを強調されているのもこういった背景があります。
もう一点繰り返しになりますが、適切な電力を使ってください。弱いと筋肉の動きも弱まります。EMSは論文でも効果が実証され、国際的にも注目されている立派な技術です。
安心して試してみてほしいと思います。
広告表現についてもいろいろと制約があります。
この点を誤解して効かないという勘違いをされている方もいらっしゃいます。
EMS(骨格筋電気刺激)の仕組み
原理
筋肉は、脳からの電気信号を運動神経に伝えてることで動くことができます。
EMSはその脳からの信号に代わる電気信号を、皮膚表面に張り付けた電極を介して、経皮的に通電することで運動神経へ電気を流し、自分の意思とは関係なく筋肉を反応させる技術です。(不随意運動)
電気刺激の周波数と出力する電力(電圧・電流)が重要
周波数20Hzが有名な意味
EMS商品の中でも一際有名なSIXPADの技術の特徴、20Hzというところに注目したいと思います。
SIXPADは論文をベースとした情報を公開しているので、紐解いてみたいと思います。
◆なぜ筋肉には20Hzが効くのか
20Hzを採用している理由は、監修されている森谷敏夫 先生の研究成果をもとにしているとのことです。
具体的に何が違うのか、論文を見ると次のような記載があります。
実験データ
下のグラフは、論文に記載されている周波数ごとの筋肉の反応の様子です。1分間の間、同じ周波数で筋肉を刺激し、張力(筋肉が縮む力)を計測しています。
出典:筋電気刺激(EMS)を利用した生活習慣病改善の可能性(浜田 拓, 林 達也, 森谷 敏夫)
元の論文:Electromechanical changes during electrically induced and maximal voluntary contractions: electrophysiologic responses of different muscle fiber types during stimulated contractions T Moritani, M Muro, A Kijima
20Hzはほぼ同じ張力を維持し、比較に用いられた50Hz、80Hzは始めこそ強い(20Hzの際の張力より)力を発揮していましたが、30秒ほどで半分ほどの力に下がってしまいました。これは、電気刺激に反応する神経の興奮性が高い周波数であるほど、早く低下することを示しています。
簡単に言えば、周波数が高い(何度も動けって言われると)と神経が先に疲れてしまって筋肉を動かせない。結果、筋肉はちゃんと動かずトレーニング効果が低下してしまい、十分な疲労を得られないということです。
SIXPADはこの研究結果をもとに、”20Hzが最適な周波数”として採用しています。
◆20Hzだけを使っていない?
実際のSIXPADは、連続的に20Hzだけを流してはいません。(4Hzなどの他の周波数を入れ込んでいるため)
上記の実験結果の内容を考えるに、神経の回復時間を入れてしまえば、20Hz以上の周波数を有効活用できる可能性もあります。
森谷先生のこの論文とデータは1985 年に公開されたもので2021年現在から36年も前のデータです。よりデータを取得した研究結果についても、存在する可能性がありますので、追って探してみたいと思います。
周波数が高いと何が良い?
EMS機器の宣伝で、周波数の違いを表示することが多くあります。
この周波数とはいったいなんなのかを説明したいと思います。
EMS機器には、二つの観点の周波数があります。
①刺激周波数 :筋肉が反応する周波数 (低周波)
筋肉は電気刺激の周波数に応じて収縮を起こします。
②搬送波周波数:身体の奥に電気を届けるための周波数 (高周波)
よくEMS機器の宣伝で、周波数が高く深く届くというものがありますが、これは搬送波の観点での表現になります。周波数が高すぎると、筋肉が反応できないスピードで電気が流れているため、高周波は筋肉の刺激の良否には関わりません。
電気の流れ方
電気は、抵抗値の低い流れやすいところを経由して電気が流れます。
電極同士が近いと、皮膚の浅いところを通るようになりやすく、必要な深さまで届きにくいこともあります。狙っている部位の筋肉の両端を狙って張ると、狙っている部位の筋肉の運動神経を刺激しやすくなります。
電気が流れやすいポイントでモーターポイントというものがあります。
こちらも筋肉の中央部に近くあるので、筋肉の両端を挟むような電極配置が有効であると考えられます。
EMS機器の基本的な構造や扱い方
EMS機器の構造は次の通り、身体に電気を流すための出力装置(EMS装置)と一対の電極だけになります。この基本的な構成は各社変わりません。
EMS装置は、次のような要素があります。
EMSの要素
電極について
電極にも複数の種類があります。※詳細は下記表を参照。
導電布の場合は、通電のために繊維に何を使用しているかが重要です。銀などの金属系のものはアレルギーにご注意ください。
金属繊維は、化学反応(酸化還元)で電気抵抗が増大し、刺激が弱くなることがあります。
繊維電極は、導電性の高分子材料などを利用した製品も出てきています。
気になる方は商品の材料を見てみてください。
電極は種類も重要ですが面積も重要です。
EMSの規格として単位面積当たりに流せる電流量の上限があります。より強い刺激を求められる方は、電極面積についても注目していただければと思います
メンテナンス
メンテナンスとしては、電源と電極の観点で注意が必要です。
①充電式の装置について
リチウムイオン電池なら放置しすぎて、過放電にならないように充電しましょう。
再使用できなくなる場合があります。
②電極について
ジェルシートをお使いの方は、ごみや皮脂を取り除くようにしましょう。乾いていても、もったいないと思って我慢して使わずに交換しましょう。
性能も落ちてしまいますし、剝がれやすく、接触面積が減る場合に痛みを感じることあがります。
最新のEMSの使い方
ハイブリッドトレーニング
最近、ジムで流行っている運動方法で、EMSを使いながら普通の運動をするものがあります。
これをEMSハイブリッドトレーニングと呼びます。従来の運動動作に対して、EMSで動きを妨げることで、より負荷を高める効果があります。
いわゆる大リーグ養成ギブスの様な使い方です。
EMS+腹筋
腹筋しながら有酸素運動をする・腹筋しながら走るといった新しいコンセプトで打ち出されていたりします。(SIXPAD Powersuit Abs)
こちらの商品は手軽に効率的に鍛えるという点で面白いです。
最新の商品は、ジェルなしでずっと使えるし、携帯性も向上したので、ぜひおすすめしたいと思います。私はパンツタイプを履きながら1時間程度ウォーキングしましたが、ハムストリングが筋肉痛です。※パンツタイプは電気で勝手に筋肉が動くので、歩行時のバランスを崩す可能性があります。ご注意下さい
SIXPAD Powersuit Abs(広告)
SIXPAD Powersuit Hip&LEg(広告)
終わりに
いかがでしたでしょうか。参考になれば幸いです。
私自身、EMSの開発を行う意当たって、いろいろと調べることがありました。
ですが、まとまった情報を見つけるのに苦労した覚えがあります。
今後、開発や企画をされる方の参考になれば幸いです。ご興味ある方はEMSをぜひ使ってみてください。