【知財ニュース】SIXPAD デザインを模倣したとして訴えられる(日本意匠権訴訟):2023.12原告の請求放棄

顔用のEMSを筆頭に美容機器等を販売するB-by-C(ビーバイシー、東京・千代田)は、SIXPADを手掛けるEMS機器大手の美容家電メーカーMTGに対し、顔用のEMS機器に関する意匠権を侵害しているとして、約2500万円の損害賠償・製品の生産差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に提訴した。

訴状などによると、B-by-Cが問題としているのは、MTG社の”SIXPAD Facial Fit”(2022年10月発売)。

機器の両端についた2つのパッドを左右の頬に当てて顔の筋肉を刺激する構造は、いわゆるヘッドホン型といわれ、最近話題となっていた。

B-by-Cは同社が2019年9月に意匠登録し、販売中のヘッドホン型のEMS美顔器「フェイスプレイヤー」と、MTGの製品の意匠が類似しているとのこと。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC153EZ0V10C23A3000000/

B-by-C フェイスプレイヤーの意匠登録

https://www.oji-be-free.com/2023/03/26/post-2157/

同社の関連する意匠権は2件確認できました。

訴状を確認しなければ、今回権利行使した意匠権がどの内容か不明ですが、このいずれかの可能性が高いと思われます。

SIXPAD Faccial Fit

商品との比較は現物を用意しなければ難しいので、代わりに当該商品に関する意匠権を見てみたいと思います。

関連する意匠権は、複数件見つかっており、一部秘密意匠(一定期間非公開)の手続きをされており、全容がわかっていません。現在公開されているもので特徴的な内容があるので紹介いたします。

以下の出願は同一の画像を使っていますが、それぞれ物品の指定が異なっています。これらが関連意匠で登録となっている点が極めて珍しい出願の仕方をされており、興味深いです。

意匠登録第1727218号:美顔器

意匠登録第1727208号:トレーニング機器

【EMS業界ニュース】SIXPAD Facial Fit(シックスパッド フェイシャルフィット)

まとめ

意匠訴訟ということですので、B-by-C社の意匠権とSIXPAD Facial Fitの商品自体の対比が必要となりますが、

おそらく同一と目されるMTG社の意匠権の画像をもとに比べてみると、”同じヘッドホン型”といっても違いが多く散見されます。

訴訟においては共通点と差異点を比較していくことになります。

今後の動向に注目したいと思います。

原告の放棄による終結

2023年12月15日、B-by-C社は本件訴訟について原告の請求放棄をしたことがMTG社のリリース並びに日経新聞の記事でわかりました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC159XN0V11C23A2000000/

https://www.mtg.gr.jp/news/detail/2023/12/article_2212.html

これによりMTG社と、B-by-C社による本訴訟が終了したことになります。

訴訟の概要
B-by-Cが保有する「美顔器」に関する意匠権(意匠登録第1643778号)を侵害するとして、東京地方裁判所に、当該製品の製造、販売等の差止め及び廃棄、並びに、損害賠償を求める訴訟(令和5年(ワ)第70066号)を提起。
裁判所から、当該製品は上記意匠権を侵害しない旨の心証が開示され、B-by-Cは、かかる請求を放棄。

※請求の放棄とは、原告が自ら定立した請求が理由の無いことを自認する意思表示となります。

B-by-C社の目的は、競合商品であるSIXPAD Facial Fit の市場からの排除にあったと思われ、その目的は達せられずに終わったものと考えます。しかし、今回の訴訟を通じ、SIXPADブランドに対して「模倣」「訴えられる」というマイナスイメージを市場に与えるという効果は一時的にもあったものと考えられます。

知財という分野は、多くの方には詳細を把握することが難しく、一見勝ち目のない訴訟であっても「訴訟」という言葉が先行すればマイナスイメージを与える可能性があります。

他社クリアランスを徹底してもこのリスクについては排除できないのが、知財部の難しいところではないでしょうか。