EMSはダイエットや筋トレ、それによる美容効果を目的に使用するのが一般的です。
ですが、EMSのメカニズムを利用してストレッチを行うことでケアにも活用できるので、その方法をご紹介したいと思います。
※詳しいEMSの説明についてはこちら
一般的なストレッチの種類と効果
ストレッチとは、筋肉や関節を柔軟にするための運動のことを指します。ストレッチを行うことで、筋肉や関節の可動域を広げ、身体の柔軟性を向上させることができます。
ストレッチには、静的ストレッチと動的ストレッチの2つの種類があります。
静的ストレッチ
ゆっくりと筋肉を伸ばし、最大限の伸ばした状態を維持する運動です。反動をつけずに筋⾁をゆっくりと伸張させるため、安全にストレッチを⾏うことができるとされ、柔軟性の改善効果も得られるという特徴があります。呼吸を⽌めずに⾏うことで効果を得やすくなります。
動的ストレッチ
軽い運動や揺らしを交えながら、筋肉を伸ばしていく運動です。細分化すると以下の二種類に分かれます。
ダイナミックストレッチ
伸ばしたい筋(主働筋)と反対⽅向の運動をする筋(拮抗筋)を意識的に活動させて、その動作を繰り返し⾏うことで、主働筋を弛緩させる⽅法です。この際に、勢いや反動を使わずに拮抗筋を活動させるように⾏いましょう。仕組みとして、筋肉を縮めるときに、反対側の筋肉は緩めて伸びやすくする作用が働くため、それを利用するストレッチ法です。
バリスティックストレッチ
勢いや反動をつけて筋を伸張させる⽅法です。各競技の動作に合わせたストレッチが⾏いやすく、筋⾁の弾性⼒を⾼めるという特徴があります。無理に行うとケガをする恐れがあるため、注意が必要です。
ストレッチは、スポーツや運動前のウォーミングアップや、運動後のクールダウンに行われますが、常生活で長時間同じ姿勢を続ける場合や、運動不足が続く場合にも、筋肉の緊張をほぐすためにストレッチが行うのがおすすめです。
特に普段、デスクワークの方は同じ姿勢で固まっているため、筋肉も常に緊張状態になってしまってコリにつながるため、注意が必要です。
効果:柔軟なカラダ
ストレッチを継続することの大事な効果として、筋肉の緊張がほぐれやすくなります。また、関節の可動域が広がりやすくなり、けがを予防できます。
普段、運動しない方は柔軟性について考えることはほぼないかと思います。
しかし、徐々に固くなった筋肉をかばって次第に広い範囲に影響が出るようになります。
ですので、どんな方にもストレッチは重要になります。
効果:リラクゼーション
過去、脳波や自律神経と全身ストレッチの相関性を確認する実験がありました。
その結果、前頭葉で発生するアルファ波の増加(リラックスする際に出る波)や心拍数の低下が確認されています。
このことから、ストレッチには副交感神経の働きが優位になり、リラックスした状態を促す働きがあるとされています。
筋肉が硬くなっている場合は、緊張状態で固まってしまっているために、同様のリラックス効果を実感するのは難しい可能性が高いです。しかし、継続的にほぐすことで効果を得やすくなるため、あきらめずに継続して伸ばしてみることをお勧めします。
EMSを掛け合わせたストレッチのメニュー
EMSとストレッチを掛け合わせることで、より効果的な筋肉の緊張緩和と柔軟性向上を促すことができます。
具体的な方法としては、以下のような手順があります。
ダイナミックストレッチ×EMS
上述の通り、ダイナミックストレッチは伸ばしたい筋肉の反対側の筋肉を収縮させることで、伸ばしやすくする方法です。なので、EMSを利用した筋収縮を行うことで、伸びやすく促すことが考えられます。
バリスティックストレッチ×EMS
ストレッチで伸ばしているところに、さらにEMSによる収縮を行うことで、疑似的にバリスティックストレッチが行えると思われます。
しかしながら、この時には過度な負荷にならないように注意が必要です。
また、筋肉の動きとしては、単収縮の15Hz未満が良いと思われます。
最近は、ストレッチボードとEMSを組み合わせた商品もあるので、見てもよいかと思います。
STYLISH JAPAN
論文から見る電気刺激による筋肉の弛緩について
以下の論文から、電気刺激を活用したストレッチに関するアプローチについて、期待されていることがわかります。
抄録
【目的】筋収縮に関するアプローチとして、治療的電気刺激や加圧トレーニングに至るまで、多くの外来刺激が筋収縮に対し、効果をもたらすと報告されている。その中でも理学療法アプローチとして、電気刺激は、古くから弱化筋や中枢神経麻痺による痙性に対し、自動運動の補助を中心として現在に至るまで、広く使用されている。
それに対し、筋弛緩に関する理学療法アプローチとしては、多くの場面でストレッチや温熱療法などによる他動的手技によって筋弛緩を得ようとする試みが中心となっているが、効果の持続性が短いなど、十分な介入とはいえないと考えられる。さらに、筋弛緩に対する自動的な介入についての検討はあまりされていないのが現状である。
これらのことから、外来刺激である電気刺激が、随意的筋弛緩の自動運動の補助として効果をもたらすかどうかを検討し、本研究は、随意的な筋弛緩の際に主動作筋または拮抗筋に電気刺激を行い、筋弛緩を促すための電気刺激の有効性の検討を行った。【方法】対象は、健常成人17名(男性10名 女性7名、年齢20-36歳)とした。 被験者には、運動課題を施行してもらい、その際に電気刺激を行った。運動課題は、コンピュータプログラム(National Instruments社製 Lab VIEW)を用い、プログラムに表示された指標に沿うように手関節背屈にて橈側手根伸筋最大収縮(MVC)の30%を維持、その状態から、不意な音シグナル(反応音)に対し、できるだけ早く完全に筋リラクゼーションをすることとした。電気刺激は、電気刺激装置(日本光電;SEN-7203)とアイソレーター(日本光電;SS-104J)を用い、刺激部位は、主動作筋として橈側手根伸筋(ECR)また拮抗筋として橈側手根屈筋(FCR)をランダムに選択し、各筋の筋腱移行部に銀皿電極を貼付して刺激を行った。刺激条件は、1msの単発矩形波を使用し、パラメーターは、強度:運動閾値(MT)の1.0倍(1.0MT)、1.5(1.5MT)、時間:反応音から0、20、40、60、80、100ms後の12条件をランダムに各条件15施行行った。また、電気刺激を行わない状態で運動課題を行ったものをControlとした。
筋弛緩の状態は、張力センサーでモニターし、反応音からセンサーが下行開始時点までを単純反応時間(RT)、さらにセンサーの下降開始時点からセンサーの値が0になるまでを弛緩完了時間とし、それぞれに関して二元配置分散分析を行い、次いでダネットの多重比較検定によりControlに対する比較を検討した。【説明と同意】本実験は、所属機関の倫理審査委員会にて承認を得たことに加え、被験者には、実験の目的から実験協力に関する権利までを十分に説明し、書面による同意を得た上で行った。
【結果】RTは、ECR刺激では、1.0MT、1.5MTともに反応音より0-60ms後の刺激で、Controlに対し有意な低下がみられ、強度と時間に交互作用が認められた(p<0.01)。FCR刺激では、1.0MTでは全ての刺激時間、1.5MTでは反応音より0-60ms後の刺激にてControlに対し、有意な低下がみられ、時間による主効果が認められた(p<0.01)。弛緩完了時間は、ECR刺激、FCR刺激において、Controlに対し、有意な低下を認めなかった。
【考察】随意的な筋弛緩に対し、主動作筋刺激は、早期の時間と強い強度の条件が筋弛緩の形成に促通の効果を生じ、拮抗筋刺激は、刺激強度に関わらず、時間条件が筋弛緩の形成に促通の効果を生じ、ともに電気刺激が随意的筋弛緩の開始を早期化させることが示唆された。また、今回のような単発刺激では、弛緩過程には影響を及ぼさないことが考えられた。
主動作筋刺激と拮抗筋刺激の弛緩に対する運動制御的メカニズムは異なるため、今後は筋弛緩に関する電気生理学的な検討が必要性であると考えられる。
神経筋電気刺激(NMES)とストレッチングの同時施行は筋伸張性を短時間で向上させる
〔目的〕本研究の目的は,NMESとストレッチングの同時施行が筋伸張性を短時間で向上させ得るか否か検討することとした.〔対象〕健常者15名とした.〔方法〕全対象者には,両側の下腿三頭筋への相反抑制に基づくNMESと同筋のストレッチングを同時に行う条件(同時施行)とストレッチングのみを行う条件(コントロール)を行った.両条件でのストレッチングは開始直前と開始5分後および15分後に実施し,その際の足関節背屈角度を測定した.〔結果〕コントロールでは,3時点間での足関節背屈角度に違いは無かった.一方,同時施行では,開始直前よりも開始5分後および15分後での足関節背屈角度が有意に増加したが,開始5分後と15分後では差が無かった.〔結語〕NMESとストレッチングの同時施行は筋伸張性を短時間で向上させる.
ただし、EMSとストレッチを組み合わせる場合には、個人差があるため、過剰な負荷をかけないよう注意が必要です。また、専門家の指導の下で行うことが望ましいです。
今後も、関連文献については調査を進めますが、ぜひご一読いただいた皆様にも注目していただきたい分野です。
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