元大手美容機器メーカーの企画・開発担当者が、仕事をする上で持っていてよかった・身に付いた知識や経験をシェアします。
将来、美容機器メーカーに努めたい学生の参考になれば幸いです。
美容機器メーカーの事業の流れ
美容機器メーカーでは、主に3つの工程で事業が成り立っています。
それぞれ企画・製造・販売となり、これらをどういう組み合わせで行うかが重要になります。
企画
企画については、どのような商品で事業を行うかを定める工程になります。
私の経験からすると、美容メーカーでもっとも重要なのは、この部分になります。
移り変わりの激しい美容機器においては、常にお客様のニーズの変遷を把握・場合によっては自身で演出して、商品を展開していくことにあります。
商品は、自社オリジナルの商品で行うこともありますし、海外ブランドの輸入販売や取引先の工場からの提案があることもあります。
企画で見るべきは、商品だけでなく、どのようなパッケージに入れ、輸送時にどういった形態をとるか(コンテナや倉庫に入れる際の箱)なども検討する必要があります。(専門の担当部門があることもあれば、企画担当がすべて対応する場合もあります。)
設計・製造
企画した商品を、量産可能なように設計し、製造する工程になります。
この点も以下のような場合があります。
・美容機器メーカー社内で設計開発する
→量産は自社工場か、取引先工場で行う
・設計会社や製造工場に設計を委託する
・もとからある商品を輸入する※場合によっては色やパッケージ等をカスタムしてオリジナルにする
商品を作る場合には、様々な部品を集約して工場で組み立てる必要があり、ファブレスメーカーの場合は、取引先の工場や設計会社に量産までの細かい手配をアレンジしてもらうこともあります。
また、生産をするにあたっては、プラスチックなどの成型に利用する金型などが必要となり、この管理などにも注意が必要になります。
※生産拠点が海外の場合は、輸入することになるため、この点に関連する税関法などの法律・取引条件(インコタームズ)についても把握しておく必要があります。→実際の商品開発前の契約時に検討すべき事項
販売
販売にあたっては、様々なルートがあります。
いわゆる、BtoC、DtoC、BtoBなどの言われ方をしますが、なるべく直接顧客に販売するほうが、利益率が高くなります。
しかしながら、自社の販売力(集客力)が弱い会社では、直接的にユーザーへ販売するのが難しい場合が多いです。
ですので、家電量販店やディーラーのように、販売に長けた企業に商品を購入してもらい、販売してもらうことが重要になります。
この時の販売額・取引形態についてはよく考える必要があります。
また、販売ルートに分けて商品を限定することでプレミヤ感を演出することもできます。
商品企画時点でどの市場にどんな方法で売るのかを考えることが重要であります。
理系の知識は必要か?
商品を企画・開発をするにあたっては、関連する技術分野について最低限知っておくべきものがあります。
例えば、次のようなことが言えます。
【企画】美容機器で用いられる施術の基礎知識は持っていたほうが良い
EMS(骨格筋電気刺激)であれば、生理学・解剖学を学び、どうして筋肉が動くのか、どこを刺激するのが良いのかを把握するべきです。
イオン導入・導出であれば、皮膚の仕組みや人体に電気の流れる仕組みを把握するとよいでしょう。
姿勢補助の商品であれば、骨格などの話を調べる必要があります。
これらは、論文等が多くあることから、調べることも容易です。
把握しておくべきレベルとしては、あくまで狙った効果を出す仕組みが何なのか?を理解することが大事です。
これができていれば、様々な商品の企画立案が容易になります。
【設計・製造】設計技術は必要か?
結論から言えば、必須ではありません。
先ほど述べた様に、設計・量産を外部に委託することが多くあります。
ですので、CADソフトを使って構造設計をしたり、電気回路の設計をしたりする経験や能力は必須ではありません。
しかしながら、取引先が作ったものの良し悪しを判断することが求められることもあり、
知識としては持っていたほうが安全・安心です。
販売先でトラブルになった際、海外の取引先で設計開発している場合は、トラブル対応が難しくなるため、
自分で対応できる余地を持てるようにしたほうが良いです。
この点については、実際に仕事に取り組む中で学ぶことも多いかと思いますので、いずれ求められるものとして把握しておけばよいと思います。
使えるとよいソフト
理系・文系ともに持っていたほうが良い知識があります。
それは、仕事でよく使うソフトです。次のものについては、触っておくことをお勧めします。
・CADソフト:機構設計やデザイン作成時に利用
・Photoshop
・Illustrator
・Excel
・PowerPoint
これらのソフトは、商品企画・開発を担当するのであれば操作可能であることをお勧めします。
中途採用でもよく上げられるものなので、もし学校で学ぶ機会があるのであれば、ぜひ触っておきましょう。
化粧品の知識
最近の美容機器では、化粧品を絡めた商品開発をするケースが多いです。
専用の化粧品を併用してもらうことで相乗効果を出す。。。というだけでなく、ビジネスモデルとしてストックモデル・サブスクリプションモデルといった定期収入を得る機会となるためです。
なので、機器(ハードウェア)だけでなく化粧品に関する知識も持っておくことをお勧めします。
加えて、化粧のプロセスを把握しておくのが良いでしょう。
- スキンケア 最初に、洗顔や化粧水、乳液などのスキンケアを行います。肌の汚れや余分な皮脂を落とし、保湿を行い、肌を整えることが目的です。
- ベースメイク 次に、ファンデーションやコンシーラーなどのベースメイクを行います。肌色を整え、肌のトーンを均一にすることで、メイクの仕上がりを良くします。
- アイメイク アイシャドウやアイライナー、マスカラなどで、目元を強調するアイメイクを行います。自分の目の形や色に合わせたアレンジをすることで、印象的な目元を作り出します。
- チーク チークをつけることで、顔に立体感を出し、健康的な印象を与えます。自分の肌色やファッションに合わせた色を選び、頬骨にのせます。
- リップ 最後に、リップを塗ります。自分の肌色やファッションに合わせた色を選び、口紅やグロスで唇を彩ります。口紅を塗る前に、リップラインを整えるためのリップライナーを使用することもあります。
美容プロセスから企画のアイデアをどう考えるか?
上記の様な美容に関するこれらのプロセスを簡略化・サポートするような商品企画を考えることが重要です。
美容というものは、時間がかかるものですので、行動を増やす発想のものはなかなか続きません。
今ある行動に代替・サポートするような商品を考えることも重要です。
例えば、最近よくあるのが鏡で化粧のシミュレーションや皮膚状態の分析を行うようなサービスも提案されていたりします。
この様な発想を企画する際には持っておくとよいでしょう。
マーケティング知識
商品企画においては、マーケティングの知識が重要な理由は、製品やサービスの開発・提供から販売・顧客満足度の向上に至る全てのプロセスにおいて、マーケティングの視点を取り入れることが不可欠であるからです。
以下に、商品企画においてマーケティングの知識が必要な理由や把握するべきポイントをまとめました。
1.市場ニーズやトレンドを把握すること
商品企画においては、まず市場ニーズやトレンドを把握することが重要です。マーケティングの知識を持つことで、顧客ニーズを正確に理解し、製品やサービスの提供につなげることができます。
2.ターゲット顧客を特定すること
ターゲット顧客を正確に特定することができれば、そのニーズや要望に応える商品企画を立案することができます。顧客セグメンテーションや購買行動の分析などを行い、ターゲット顧客を特定することができます。
3.競合情報を収集すること
競合他社の製品やサービスに関する情報を収集することができれば、競合優位性を確保するための商品企画を立案することができます。市場競争状況を分析し、競合他社の強みや弱みを整理することが重要です。
4.プロダクトの特徴や利点を明確にすること
製品やサービスの特徴や利点を明確にすることで、顧客へのアピールポイントを訴求することができます。プロダクトの特徴や利点を顧客の視点から把握し、明確に表現することができます。
5.プロモーション戦略を策定すること
製品やサービスを顧客に訴求するためのプロモーション戦略を策定することが重要です。狙ったお客様に商品を知ってもらえなければ事業は成り立ちません。プロモーション戦略をしっかり考えて、だれにどのようにリーチするかを考えることも重要な仕事です。
6.価格戦略を決定すること
価格戦略を適切に決定することで、市場における競争力を確保することができます。市場価格や競合他社の価格戦略などを分析し、自社のコストバランスを把握しながら適切な価格戦略を決定することが重要です。
7.顧客満足度を向上させること
製品やサービスの提供によって顧客満足度を向上させることができれば、リピート購入や口コミによる広がりなどにつながります。顧客満足度の向上につながるサービスやアフターケアなどを検討することで、他社の差別化やユーザーのファン化につなげることにつながります。
以上のように、商品企画においてマーケティングの知識は重要です。マーケティングの視点を取り入れることで、市場ニーズやトレンド、ターゲット顧客、競合情報などを把握し、適切な商品企画を立案することができます。また、顧客満足度を向上させるためのプロモーション戦略や価格戦略などを適切に決定することもできます。
プロダクトデザイン
中途の求人を見ていると、自身でのプロダクトデザインの経験を問われることもよくあります。
絵を描けることやCAD やillustrator・PhotoshopなどのAdobeソフトを使えることは当然として、次の様なプロセスを把握しておくとよいでしょう。
- リサーチ プロダクトデザインに必要な情報を収集するためのリサーチを行います。市場調査やユーザーインタビュー、競合製品の分析などを通じて、ニーズやトレンド、問題点などを把握します。
- コンセプト開発 収集した情報を元に、プロダクトのコンセプトを開発します。コンセプトスケッチやスケッチモデルを作成し、アイデアを形にします。この段階で、プロダクトの概要やデザインイメージを確定します。
- デザイン開発 コンセプトを元に、具体的なデザインを開発します。3D CADを使用したデザインモデリングや詳細図面作成などを行い、プロダクトの形状や構造、色や素材などのデザイン要素を決定します。
これらのプロセスに合わせて、ユーザーがどうしたら使いやすいか、どう使わせたら感動するかなど利便性や想起される感情をイメージしながら考えるのが大事です。
美容機器は、近年デザインの進歩が進んでおり、高級感を感じるものが増えています。商品のデザインもできるのは必ず強みになります。
語学
美容機器の製造を行う企業の多くは中国、台湾、韓国にあります。
これらの国とのコミュニケーションをしっかりできることがビジネスを円滑に進めるうえで重要になります。
英語を使えることも多いですが、私の経験では現地の言葉についても勉強しておくほうが良いです。
過去、中国の工場でOK、NGと伝えても工員の方に通じないこともありました。
その経験から、仕事で使うような簡単な単語は把握したいと感じました。
まとめ
以上のように、美容機器メーカーで把握しておくとよいものを紹介しました。
私の経験では、簡単なマーケティング知識・美容のメカニズム・設計にかかわる技術・ソフト・語学が特に持っておくとよいと考えます。
すべてを網羅するのは難しいので、これらのどこかで自分の強みを発揮できるように磨くことと、ビジネスモデルがどうなっているのかという点を意識しておくと、就活でも優位に活動できるかと思います。
ぜひ、頑張ってください。